はじめまして。
初めてアンブックスを読んだ子供のころからずーっと疑問だったことがあるんです。
アンが結婚するあたりから、電話がたびたび登場しますよね。でもこの電話って一対一の対話をしている最中に、他所の家で受話器を上げれば誰でも参加できてしまう代物だったりします。
ダイアナとアンが通話中、なぜかパイ家の時計の音が聞こえてきて「ジョシーが盗み聞きしてる!」とダイアナが怒ったり、時代がくだってリラと通話するケネスが「電話じゃぁ皆が受話器を外して聞いているから話せない」みたいな発言をしていた記憶があります。
初期の電話ってこういうものだったのでしょうか? 他の小説とかでは見かけないし、まだ小学生だった当時、大人の人たち(昭和一桁生まれの両親と、明治生まれの祖母)にきいても「そんな変な電話聞いたこともない」とのことで、結局何も判りませんでした。
どなたか機械音痴で勉強不足の私に教えてください。
それはね、宇宙からの電波が聞いてる人の頭の中に直接入ってくるからです(ウソです)。
ジミーさんこんにちは。電気工学専攻なのに文学書の解説も書いてるましうです(ホント)。
これはダイヤル交換式になる前の「有線電話」と呼ばれる方式です(ホント)。
磁石式の電話機って知ってます? マイクが真ん中にラッパみたく出っ張ってて、直接
耳に当てる受話器が左わきにかかってて、右側にハンドルがついてる昔の電話機です。
それを思い浮かべて下さい。それでは、この電話機の使い方をご説明します。
受話器を外して耳に当て、ハンドルを一二回まわすと交換台に繋がり、交換手が出ます。
マイクに向かって「アン・シャーリーですけど、ダイアナ・バーリーに」というと、
交換手が「バーリーさん、ダイアナ・バーリーさん」と呼びかけます。
ところがこれは一斉呼出になっていて、各家庭や事業所の電話すべてに「バーリーさん」
という呼出しが聞こえてしまいます。その時、バーリー家で受話器をとれば、交換手が
「グリーンゲイブルスのアンから電話です」と応えて、アンとダイアナの会話が始まり
ます。この時ダイアナ・バーリーでない誰かが受話器をとったら、会話は傍受できます。
つまり、個別の電話回線でなく、一本の回線を全部の電話機が共有(並列ツナギ)して
いるわけです。当然、誰かが話し中だったら、他の人は使えません。緊急の場合は、
交換手が割り込みます。
時代がもう少し下ると、同じ電話機でも個別回線になって、交換手が各家庭の電話を
直接呼出すようになります。これを交換式と言います。電話機にダイヤルがついて、
機械式交換機で自動接続になるのは、もっとずっと後の時代。
なぜ「磁石式」と呼ぶかというと、右わきに付いているハンドルを回すと、中に入っ
ている磁石がコイルの中を回って電気を起し、交換台のベルを鳴らして交換手に知ら
せるからです。
実はこの有線電話、ちょっと田舎に行くと今でも日本で使われています。交換手は
JA(つまり農協だね)のお姉さんだったりします(ホント)。
交換手は女性の憧れの仕事でした。そして大抵は地元の交換台に採用されました。
だから「アン・シャーリー」と名乗っても、「グリーンゲイブルズのアンから」と
相手に伝えたわけです(ここはましうさんの文学的表現ね)。
昭和一桁生まれでしたらご存知のはずなんですが、きっと忘れてしまわれたのですね。
身近なものほど、なくなると忘れ去られるのは早いですから。
ましうさん、早速丁寧な御回答ありがとうございます。
もしかしてアンの時代から生きていらっしゃる?と疑いたくなる程、詳しいですね。
私は英文科を出てSEやっています。機械のことは全く判らないのですが、並列ということはどこかが断線したら村中で不通になるということでしょうか。それからアンがダイアナと話したくて「バーリーさーん」と呼び出してもらっているときに、誰か赤の他人がダイアナになりすますことも可能なのでしょうか。ものすごく奥深い世界ですが、使い方によっては自治会の回覧版とか防災無線の代わりになりそうで便利な気もしてきました。
私の知識で最古の電話は「となりのトトロ」に出てくるタイプだったのですが、これは交換式になるわけですね。いやー勉強になりました。
交換をしてるオルソンの奥さんがよく盗み聞きしてるシーンがありましたが、ああいうのなのね。
映画だと「ラジオデイズ」という作品の中で、使われています。
モンゴメリ関係であれば、「ストーリーガール」などを映像化した「アボンリーへの道」でも出てきました。この時、確か、フェリシティが交換手を務めていたり、ガスの消息を聞いていと時などに表現されていました。
交換手はだれからどこにつながっているのか、わかるので、盗み聞きしていたとも言います。
> 交換をしてるオルソンの奥さんがよく盗み聞きしてるシーンがありましたが、ああいうのなのね。
aerithさん、そのとおり!
> どこかが断線したら村中で不通になるということでしょうか。
それは直列ツナギ。
図のように、一本の幹線に端末がぶら下がっているイメージですね。
A〜Dは端末、すなわち各家庭の電話機です。Aと交換を結ぶ幹線が切れてしまうと、
切れた先は不通になりますが、交換に近いC、Dは生きています。
○--------------×----------------------------◎
A ↓ ↓ ↓ 交換台
○ ○ ○
B C D
> それからアンがダイアナと話したくて「バーリーさーん」と呼び出してもらっている
> ときに、誰か赤の他人がダイアナになりすますことも可能なのでしょうか。
それは可能ですが、狭い村ですから、すぐにばれてしまうでしょうね。
> 使い方によっては自治会の回覧版とか防災無線の代わりになりそうで便利な気もしてきました。
はい、日本の農村では、そのように有線電話を活用しております。
民宿などに泊まったとき、朝早くに黒電話からNHKラジオが聞こえたり、「○番さん〜」
などという呼出が聞こえてきたりします。それが有線電話です。
> 交換手はだれからどこにつながっているのか、わかるので、盗み聞きしていたとも言います。
もちろん、守秘義務はあるわけです。
あ、ずれちゃった!